大阪書林御文庫講の歴史は300年前、江戸時代享保年間にさかのぼります。文庫とは、文書や図書の保管庫のことで、御文庫講はその文庫を管理する結社です。
享保8(1723)年に、大坂、京都、江戸の本屋仲間の有志により、住吉大社に文書を保管する蔵「御文庫」の寄進が発願され、蔵の運営管理を担う「住吉御文庫講」が結成されました。その後、享保15(1730)年に大阪天満宮にも「天満宮御文庫講」が結成されています。
以降、明治43(1910)年には両御文庫講が合併し、「大阪書林御文庫講」と改称されました。それから現在に至るまで、講員による初刷り本の奉納、蔵書の点検のほか、毎年5月には住吉大社、10月には大阪天満宮の曝書(文書の虫干し)を実施しています。
天神祭においては、陸渡御・船渡御の奉仕を行っています。陸渡御では「文車(ふぐるま)」と呼ばれる文書や書籍を運ぶための車を曳いて行列に参加。ご祭神の菅原道真公が道中で読む書物を運ぶ大事な役割です。2024年は老朽化していた文車を修繕しました。船渡御では講の供奉船を出し、200人ほどの関係者が乗船しています。
現在、大阪書林御文庫講の運営は、個人の講員のほか大阪出版協会と日本書籍出版協会大阪支部によって支えられています。
大阪出版協会は、江戸時代の出版業者の集まり「本屋仲間」を発祥にし、明治時代の大阪書籍商組合、大正時代の大阪図書出版協会など変遷を経て、戦後、昭和31(1956)年に誕生しました。日本書籍出版協会は、約400の出版社からなる日本最大の出版業者の団体で、昭和32(1957)年に設立。大阪出版協会のほとんどの会員が日本書籍出版協会大阪支部の会員として参加しています。
御文庫講の特徴は、天神祭での奉仕だけでなく、文書や書籍といった文化遺産を守る重要な役割を担っているところです。毎年5月と10月に行う住吉大社・大阪天満宮での曝書では、先人たちが遺してくれた貴重な文書・書籍に触れ、つい時間を忘れて見入ってしまうこともあります。本の世界もデジタル化が進んでいますが、紙の書籍の持つ素晴らしさを後世に伝えていきたいと思います。